欧洲杯押注平台_2024欧洲杯网站-官网app

图片

グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



静岡の大地(26)能登半島の地震と伊豆大島の地震 2024年2月7日


ホーム >  大学案内 >  大学概要 >  学長エッセイ 「静岡の大地を見る」 >  静岡の大地(26)能登半島の地震と伊豆大島の地震 2024年2月7日

 2024年元日の午後、緊急地震速報に緊張した。京都府宇治市の自宅にいて、震度2の揺れを私は体感していた。比較的ゆっくりと揺れた。大規模な地震が能登半島地域を大きく揺らしたことがすぐに判明した。この地域の地震活動を以前から注目しており、1993年2月7日の地震の時には記者に資料を提供しながら、記者の取材のことまで記録に残した。その後、2007年にも目立った活動があり、その後も群発地震が続いていた。

 まず能登半島地域の地震活動の状況を具体的に図示する。地震の規模は「マグニチュード」という単位で表す。ある点から岩盤の破壊が発生して、破壊面が急激に広がる。破壊の最初の点を震源という。水平方向にも上下にも破壊が走る。地球の表層部は堆積層などで柔らかくて割れることはない。地表から深くなるほど高温であり、流体の性質が勝つのでやはり柔らかくて割れない。地表から深さ5-15km位の部分が硬くて割れやすい。したがって「ずれの応力」が働いているとその深さの場所に地震が起こる。昔、微小地震観測の結果から、そのことを私は発見して論文を書いた。その内容は「浅い地震は地殻の深さ13-15kmに集中的に起こる」というものであり、そこから大規模地震であっても同じような深さから破壊が始まると考えられるようになった。大規模な破壊では、上下にも水平方向にも破壊面が広がるが、上では地表をずらせて大揺れとなり、水平方向には長く破壊が走る。その時にはマグニチュード7以上の大規模地震となる。

 破壊面の走る速さはほぼ毎秒2kmである。破壊が走っている間中、破壊面から地震が発生して縦波と横波とが伝搬し、地震波が地表に到着すると地面が揺れる。その揺れの強さが各地の震度である。地震の規模であるマグニチュードは破壊面の大きさで決まる。2km/秒で破壊が成長する間、その近くでは強い揺れがある。震度5以上の強い揺れが続いている時間が長いと、大規模地震であることが分かる。例えば2011年3月11日のマグニチュード9.0の巨大地震では、南北に500kmほど破壊が走ったので、数分間広い範囲で大揺れとなり、海底では大きな隆起運動があって大津波となった。

 地震波には縦波のP波、横波のS波の他にも地球の表面に伝わる表面波や、近くだけに伝わる動きがあり、揺れたりずれ動いたりするが、一定時間後には元に戻る。地震波を発生させた破壊面のごく近くでは元に戻らない変形もある。つまり「永久変位」がある。大規模地震ではそれが地表にも現れる。海の近くに破壊が起こると海底が変動して津波が起こる。海の近くにいて、大揺れが長く続いたら、津波が来ると判断して、迷わず海から離れた高い場所に逃げるという知恵を実行してほしい。

図1
マグニチュード2以上、震源の深さ0-100kmの地震分布。
1990年から2024年1月3日まで。

図2
図1の長方形内の範囲の地震の時系列。
マグニチュード6以上のうち4つの地震に詳しい説明がある。

図3
図1のうちのマグニチュード5以上の地震の分布。
マグニチュードが大きいほど数は少ない。

図4
図1の地震のうちマグニチュード3以上の地震の分布。能登半島の北端に沿って北東―南西方向に細長く密集しているのは主な地震の後に続く余震である。
長方形で囲んだのは跡津川断層地域
 図4をよく見ると、能登半島地域の今回の大地震の余震の他に、例えば能登半島から南へ目を移すと、岐阜県北部に位置する跡津川断層に沿って、小さい地震が北東―南西方向に線状に並んでいるのが見られる(図の長方形で囲んだ部分)。能登半島北部の活断層運動で起こった余震群と同じ方向に並ぶということは、同じパターンの応力が一体に働いているということを示している。活断層の中には平常時に小さい地震を深さ15km辺りで定常的に起こしているものがある。そのような運動をクリープというが、跡津川断層も活断層面にクリープ現象があって、ゆっくりとずれているのかもしれない。

図5
図1の地震を含んで、さらに小さい地震を加え、マグニチュード1以上の地震の分布を示す。
一面に地震分布が拡がり、小さい地震はどこにでも起こっていることが分かる。

図6
1901年から2023年末までのマグニチュード6.8以上の地震分布。
この次の日にマグニチュード7.6の地震が発生した。

図7
図6に2024年1月1日から3日の地震を加えた分布図。
 図6と図7を見比べると、大規模な地震はそれまでの地震分布の隙間を埋めるように発生していることが分かる。

 大規模地震には、プレート境界のずれによって起こる巨大地震、プレート内の岩盤の破壊によって起こる活断層の地震、大規模の火山活動にともなって起こる地震がある。プレート境界の地震は、プレートの相対運動が一定しているので、ほぼ定期的に、しかも頻度が高い発生様式となる。

 活断層性の地震は、プレート境界から押される力で起こる。プレート境界がずれて巨大地震が起こった後には、そこから伝わる押す力が減少するから、押される側の活断層には地震が起こりにくくなる。プレート境界地震の前には大きく押してくる力で活断層の地震が起こりやすい。プレート境界の大規模地震の直後にも、大きく動いた影響が残って10年ほどは活断層帯の活動が続く。ただし、活断層であっても最近数百年の間に大規模地震が起こった活断層には、すぐには次の大規模地震は起こらない。長い間大規模地震がなく、最近中規模の地震や群発地震が起こり始めている活断層が、近い将来の大規模地震の候補である。言い換えると、大規模地震が起こった活断層はしばらく安全な活断層である。

 原子力発電所の設置の歴史を見ると、大規模地震の起こった跡を避けて設置した傾向が見られる。そこは実は近い将来地震の起こる場所である可能性が高いことがある。

 火山体に発生する大規模地震は火山活動に関連して起こる。火山のマグマの供給量が大きいと、すぐに繰り返す可能性もある。噴火が地震の影響で起こる場合もある。富士山の場合にはプレート境界の大規模地震などに連動する例があるが、富士山はすでに噴火の時期を過ぎているとも言われているので、いつ大噴火が起こるかという予測は難しい。鹿児島の桜島では、大噴火とともに大規模地震が起こった記録が近年にもある。1914年1月12日に始まった桜島の噴火は日本で20世紀最大の噴火であった。噴火中に起きた桜島地震による死者を含めて8名の死者および行方不明者を出した。噴火前は島であった桜島は、大正大噴火による溶岩流出によって大隅半島と陸続きになった。

 能登半島の地域では、先に述べた1993年の地震以後、ずっと注目してきたので、大規模地震が発生してもそれほど驚くことはない。同じような例はいくつかあるが、それぞれの活動のパターンは異なっており、地震の予知にまで応用できることにはならない。例えば1995年1月17日兵庫県南部地震の場合を図で示す。かなりパターンが異なるが、前駆的な地震活動があったことは理解できる。

 図8は、1995年兵庫県南部地震の地域のマグニチュード3以上の地震の分布図である。淡路島から六甲山麓にかけて帯状の地震分布がある。その地震のほとんどはマグニチュード7.3の本震の後の余震である。図9は、マグニチュード5以上の地震の分布である。明石海峡に最初のマグニチュード6.1の地震が起こったのは1916年であり、その活動が続く中で1944年東南海地震、1946年南海地震の二つのプレート境界地震が起こった。それにより、内陸の岩盤のストレスが抜けて、一帯は地震活動の静穏期を迎えた。次の活動期が始まると同時にマグニチュード7.2の大規模地震が起こった。

図8
六甲から淡路島周辺の地震分布。
1910年から2000年。震源の深さ0-100km。マグニチュード3以上。
縦軸は北緯、横軸は東経。

図9
図8の長方形部分の地震の時系列。マグニチュード6以上の地震の詳しいデータが入れてある。図の縦軸はマグニチュード、横軸は1910年から右へ2000年までの年号が示されている。

図10
図8と同じ範囲のマグニチュード5以上の地震分布。1916年の地震、1995年の地震、ともに明石海峡に震源があり、1916年に破壊し始めていた場所から、1995年1月17日に破壊が大きく走った。
 図11は、伊豆半島付近の地震の分布図である。1978年伊豆大島近海地震の時の地震活動を見ると、能登半島地震の場合や兵庫県南部地震の場合とはかなり異なる活動をしている。この地域の一帯が火山帯であって、火山活動と関連しながら活断層帯で地震活動が起こるというような特徴を持っている場所である。

図11
伊豆半島周辺の地震分布と伊豆大島近海地震。
マグニチュード1以上の短期間の分布。

図12
図11の長方形で囲んだ地震の時系列。
縦軸はマグニチュード。横軸は1977年7月から1978年12月までの月を示している。明らかな前震活動があった。

図13
同じく、時間空間分布。図11の長方形の範囲の東端が、この図の上側に対応する。
この図の縦軸は図11のA-Bに対応し、横軸は図12と同じ月を示す。東西の地震群がほぼ同時に起こっていることが分かる。
 このように地震活動ごとにその様子を図示してみると、結局はそのときどきでに異なっており、地震活動の推移を一言では表せないことが分かる。しかし、大規模地震の起こる場所はよく分かってきているので、その場所ごとに履歴をまとめておくと、ある程度の予測が可能となることも確かである。とくに大規模地震の後、まだ火種が残っているのか、これで安全になったと宣言できるのかということは、明確に言えるように観測網を整備し、分析をしていかなければならないと思う。

尾池和夫



参考URL

尾池和夫:取材される側の論理
https://ameblo.jp/catfish69/entry-12692274927.html?frm=theme

モバイル表示

PC表示